SS1は上り基調の12.4kmのコース。刻々と道幅が増減しながらアップダウンを繰り返す。次々と迫るコーナーのリズムも一定ではなく、浅いコーナーが続いてスピードと遠心力が増したところで深いコーナーが迫ってきたり、下りながらのコーナーの途中でグレーチング(側溝蓋)の無い側溝が存在したりと難易度の高いコースとなる。また、路面の砂利などのダストも多く、ドライバーは高い集中力を維持しなければならない。コーナーを一つ一つ処理していくのではなく複数のコーナーを一つのセクションとして捉える必要があるため、ペースノートの精度とコ・ドライバーの技量が試される。SS2は11.5kmのコース。こちらはSS1に比べたら車幅も広く、やや下り基調のフラットなハイスピードコース。フィニッシュ手前には観客が見守るギャラリーコーナーも設けられることとなる。
86/BRZ限定のCUP-2クラスには4台の86がエントリー。前戦から引き続きの参戦となるのは水原・中村組、カルロス・薮本組、吉原・佐野組。そして今年初参戦となるのが奥本・谷﨑組。このチームは昨年愛知県豊根村で行われたシロキヤラリーでのTRD Rally Cupプレシーズンマッチに参戦し、全日本ラリー選手権に参戦する強豪選手に続く3位のタイムで入賞した。まだ学生の二人にはマシン制作も金銭的ハードルが高く、昨年は参加規定を最低限満たした「ほぼノーマル」の状態での参戦だった。本戦においてもマシンのアップデートは最小限となる。奥本も「昨年のシロキヤラリーに参戦して以来のラリー参戦となるので、リハビリ的なイメージで臨みます。今回、86に機械式デフを装着したので、そのフィーリングを確かめながらの走行ですかね。ただ今回はコースも長いのでちょっと不安です。」と語る。
前戦、見事な逆転優勝を決めたカルロス中村は、山本明生に代わって藪本啓介とともに参戦。「前回勝っちゃったので、調子に乗って色々装備を揃えちゃいました。定期預金も解約しちゃいましたよ」と冗談ぶるが、気合は充分だ。
そして始まったセクション1。SS1において、前走ゼッケンの地区戦のマシンがコースを塞ぐ形でリタイヤした影響でSSキャンセルとなる。出鼻をくじかれた形となるが、気を取り直してのSS2。ここで飛び出したのは学生の奥本・谷﨑組。後続に4秒差をつけてのフィニッシュとなった。それに続くのが吉原・佐野組。前戦ではリタイヤとなったが、その速さの片鱗は見せていただけに本戦でリベンジを果たしたいところだ。全戦参戦中の水原・中村組は、毎戦着実な成長を見せる。ネコステでは残念ながらマシントラブルによるリタイヤに終わったが、その後もラリー走行会等に精力的に参加してスキルアップを図って本戦に挑んだ。その成果もあってか、SS1ではカルロス・薮本組を抑えて3位で終えることとなった。
続くセクション2。午前にキャンセルされたSSからのリピートとなる。このSSにおいても奥本・谷﨑組の好調は続くが、追う吉原・佐野組が猛プッシュ。0.3秒差でフィニッシュするなど、充分逆転も狙える位置でのフィニッシュとなった。そして迎えた最終SS。逆転を狙う吉原・佐野組がついに1秒差でクラストップのSSタイムを記録する。しかし午前中についたタイム差は埋められず逆転は叶わなかった。吉原は「SS2でミスをしてしまい差が開いてしまいました。最後のSSのタイムでは奥本さんに勝ててただけに悔しいです。」と悔しさをにじませた。
優勝を果たした
奥本は「なんとか勝てました…が、今まで経験したことのない距離のSSと、タイム差が迫ってきてた吉原さんからのプレッシャーがキツかったです。今回入れたデフも調子が良く、マシンも前に出る感覚が強くなっていい感じでした」と、勝ちつつも苦しい戦いを振り返る。
3位の水原は「まずは完走できてホッとしてますが、今回は順位も上げることができたので上出来ですね。個人的にペースノートの距離を掴む感覚が苦手で、今回に向けてそれを意識して練習してきたので、その成果も出せたのかなと思います。いなべでは更に順位を上げられるよう頑張ります」 と意識を高める。
そして、今一歩調子が出なかったカルロス中村は「若者のパワーに負けました。最終SSで15秒くらいタイムアップはできたんですが、まだまだ足りませんでしたね。(前戦、夜間走行で逆転したので)夜のステージがあればよかったのに(笑)。でも、まだまだ負けられません。いなべでリベンジです!」と熱く語った。
ドライバーズポイントの首位は依然カルロス中村。まだまだシリーズの行方は分からなそうだ。
ヴィッツ限定クラスのCUP-1には3台がエントリー。ネコステで圧倒的勝利をあげた毛受・赤木組を筆頭に、マシンのカラーリングを施しての参戦となる島根・山崎組。そして、昨年の南房総ラリーのプレシーズンマッチにも参戦した山本・葛西組というラインナップ。前戦終了後、島根・山崎組と(山本・葛西と同チームの)中溝・能仁組が真剣に情報交換を行っていたことからも「毛受包囲網」が形成されつつある。
SS1がキャンセルされSS2からのアタックとなるが、毛受・赤木組は思い通りにコントロールできないマシンの挙動に悩まされリズムに乗れない。その毛受を横目に島根・山崎組は落ち着いた走りを見せ、クラストップタイムをマーク。続くSS3、サービスでセッティングを変更して臨んだ毛受・赤木組が覚醒の走りを見せる。後続に15秒差をつける圧倒的なクラストップタイムの走りを見せ、クラス順位でも1位に返り咲く。そして迎えた最終SS。再びセッティングに悩む毛受を横目に、同コースのSS2から20秒タイムアップを果たした山本・葛西組がステージベストタイムを獲得。山本は「去年の南房総ラリーでは早々にリタイヤしてしまったので、今回は完走が至上命題でした。そのためセクション1は欲を出さずに抑えて…それでも最終SSでクラストップを出せたので、この感覚を次の参戦に活かしていきたいです」。結果としては12秒差で毛受・赤木組の2連勝となったが、各SSでベストタイムを分け合うこととなり、今後の展開に波乱が予想される。
最右翼の島根は「前回最下位だったので、一つでも順位を上げて終わることを目標にして来ました。前回マシンが出来たばかりだったのでフィーリングが掴めなかったんですが、だんだん乗れてきてSS2でトップタイムを出せたのでよかったです。気合は入ってても冷静な頭で走ることを意識しようと山崎と相談してたので、今回はこれで満足です。3位2位と来て、次こそは毛受さんに勝ちたいので、いなべで今日の延長戦です!」と決意を語った。そして追われる立場の毛受は「午前のセッティングが大外れだったので、サービスでとりあえずタイヤの空気圧を調整しました。それが良かったようでSS3は気持ちよく走れたんです。そのまま走れば良かったんですが、SS4の前に再度空気圧を変更してしまい…。結果、全SSを違うセッティングで走ることになってしまいました。勝てはしましたが悔しさと課題が残るラリーになってしました…いなべでリベンジですね…」と語った。
本戦においても、世界最大級オーディオメーカーで、家庭用オーディオ、ホームシアター、車載用などの民生機器から、世界中の映画館、スタジアム、レコーディングスタジオなどを対象とした業務用機器をラインナップするJBL(ハーマンインターナショナル株式会社、東京都台東区)からパートナーシップを受け、優勝クルーおよびU-25 AwardのクルーにはJBL製ヘッドフォンが賞品として贈呈された。
EVEREST ELITE 750NC / E65BTNC
次戦は6月22〜23日に三重県いなべ市〜滋賀県東近江市で開催される「いなべ東近江ラリー(公式サイト)」。7本のターマックSSで構成され、SS総走行距離25.56kmのステージとなる。
多くの選手がリベンジの地として選んだいなべ東近江ラリーは、TRD Rally Cup by JBL 2019のシリーズポイントの行方を占う上で最重要ラウンドになることが予想される。まだまだシリーズをひっくり返す可能性のあるCUP-2と、打倒毛受に燃えるCUP-1。次戦も目が離せない。
※イベントレポートという性質上、文中で敬称を略して表現している個所があります。