SS1とSS3で使用されるKANPUU LONGは6.15kmの上り基調のコース。ガードレールの先は崖という視覚的にもチャレンジングなコースとなる。全体的に傾斜のきつい上りとなるが、雨の影響を強く受け路面はトラクションがかかりにくい状況となっていった。
SS2とSS4のASHIDANI R LONGは下りを多く含む8.278kmのコース。KANPUU LONGに比べさらにガレた路面となり、路面の石のサイズも大きめとなる。また、コース中間地点にはターマック路面もあり、非常に攻略が難しいコースとなる。
さらには競技車が走行を重ねるごとに路面には深い轍が作られ、特に深く掘られるコーナーの箇所ではマシンの操縦性を大きく失うこととなる。かと言ってラインを外すとパンクの危険性もあることから、細心の注意を払っての走行が求められる。
86/BRZ限定のCUP-2クラスには4台の86が出走。丹後、いなべ東近江と連勝で波に乗る奥本・谷﨑組を追う形で、カルロス・薮本組、高木・安藤組、吉原・佐野組が引き続きエントリー。ダート路面の走行経験はあれど、林道グラベルでのSSラリーは初経験となる選手が多い。
初手でリードを奪いたいSS1ではカルロス・薮本組が快走。ネコステでの優勝から順位が低迷していたが、悪路でベテランの技が光る。しかし若手も食い下がり、吉原組が0.2秒差、その後に奥本組が1.4秒差で続く。前戦いなべ東近江から参戦し台風の目とも言える存在となった高木組はSS1で勝負を決めるべく渾身のアタックを試みるが、痛恨のコースオフでリタイヤとなってしまった。
続くSS2でもカルロス組は好調な走りを見せる。後続との差は実に12.7秒。ここ数戦の鬱憤を晴らすかのような快走を見せた。
午前の2本のSSのリピートとなるセクション2。このままでは終われない吉原・佐野組と奥本・谷﨑組。ターマックでのスピードは誰もが認めるものとなった奥本・谷﨑組だが、まったくの未知の路面となった今回の路面には苦戦することとなる。「タカタのようなダートトライアル場での走行経験はあるんですが、林道で、しかもこんなに大きな石がゴロゴロしている道は人生初です。深い轍ではマシンの底を強くヒットする音が響いて…そのたび心も痛みました(苦笑)。」とため息混じりに漏らす奥本はSS1のタイムから20秒近く遅れることとなる。そんな奥本と対称的となったのが吉原組。前戦いなべ東近江終了後には「86でのグラベル走行は1〜2回しか経験がないが、前に乗っていた車では結構走り込んでました。ターマックよりグラベルの方が勝機はある。絶対勝ちに行きます」と強気の宣言をしていた吉原組だが、SS1のカルロスのタイムを20秒近く縮める豪快な走りを見せた。
雨の影響から、この頃には、各車ともフロントガラスが曇る症状が見え始めてくる。その症状が特に酷かったのが好調だったカルロス組。ほとんど視界が確保できない状況となり、アクセルを踏めない状況が続く。それもあり40秒近くタイムロスしてしまい、セクション1でのマージンを使い果たし逆転を許してしまうこととなる、
そして迎えた最終SS。タイムとしては安全圏内に入った吉原組だったがペースを落とすことなくアタックを続け、約7秒タイム更新。前方の視界がほとんどなくなってしまったカルロス中村組は、なんと後輪をパンクしてしまいマシンの挙動を失うこととなる。なんとかコース上に留めようとするが、マシンを側溝に落としてしまう。ここでリタイヤも考えたカルロス中村だったが「完走すれば3位に入れる状況だったので、意気消沈している中村さんをなんとか説得してマシンを出すことにしました。」とコ・ドライバーの薮本。二人でマシンをコースに復帰させ無事フィニッシュすることができた。
これにより吉原組が有言実行となる初優勝を獲得。奥本組は2位となった。
この結果を受け、シリーズチャンピオンを決める有効ポイントは奥本が31ポイントで引き続きトップではあるものの、吉原が25ポイント、カルロスが20ポイントと、最終戦までチャンピオン争いの行方がわからない状況となった。
ヴィッツ限定クラスのCUP-1は3台が出走。チャンピオン獲得に事実上の王手をかけた毛受・赤木組は欠場となるが、今年二戦目となる山本・葛西組に加え、桒村・古本組とピエール北川・漆戸組が初参戦となる。ラリーチャレンジに長年参戦し、幾度もの優勝経験がある桒村は同じ四国の徳島出身。四国特有のグラベル路面を知っているだけにアドバンテージがある。ただし、今回初のタッグと組む古本とはラリー当日に初顔合わせをするほどの急造コンビ。コンビネーションが重要とされる今回のコースでどのような走りを見せるかがポイントとなる。また、SUPER GT等のモータースポーツMCとして活躍するピエール北川。昨年のいなべ東近江でラリー初体験となったが、今回は自身のマシンを仕立てての参戦。しかし、マシンが完成したのが直前だったこともあり、ほとんどテストなしでの実戦投入となった。
SS1から飛び出したのは、やはりベテランラリーストの桒村・古本組だった。CUP-2のタイムをも20秒近く上回るスタートダッシュで、独走体制が予想された。しかし、そのアタックの際に左後輪をバーストさせてしまう。それに気づいたのがSS2スタート直前だったこともあり、SS2はバーストしたままでの走行を余儀なくされる。そのSS2でトップタイムを記録したのはピエール北川・漆戸組だった。パンクのハンデを持つ桒村・古本組のみならず、ダートトライアルでの経験も豊富な山本・葛西組からも約9秒もの差をつけてのフィニッシュとなった。
このままでは終われない山本・葛西組。スロースタートなのが自身の課題と話す山本は、今回もステージ序盤でタイム差をつけられてしまうこととなってしまったが、セクション2での巻き返しを誓う。
そして迎えたSS3。「集中力が途切れてしまいペースノートをロストしてしまった」と語る桒村・古本組は自身の午前タイムから10秒近く落としてしまう。そしてこのSSで盛り返したのが山本・葛西組。クラストップタイムでのフィニッシュとなった。
最終SSでは「十分にマージンがあったので、完走モードに切り替えて走りました。とはいえ下りが好きなので、ついつい攻めちゃいましたね」と語った桒村・古本組。トップタイムを記録した山本・葛西組に0.5秒遅れることとなったが、初タッグとは思えないコンビネーションで、20秒近い差をつけたまま見事優勝を決めた。序盤のペースに課題は残しつつもスピードをアピールした山本組。そして、無事完走したピエール北川・漆戸組も、山本から10秒差とラリー経験数から見ると驚くべき好タイムでのフィニッシュとなった。
本戦においても、世界最大級オーディオメーカーで、家庭用オーディオ、ホームシアター、車載用などの民生機器から、世界中の映画館、スタジアム、レコーディングスタジオなどを対象とした業務用機器をラインナップするJBL(ハーマンインターナショナル株式会社、東京都台東区)からパートナーシップを受け、優勝クルーおよびU-25 AwardのクルーにはJBL製ヘッドフォンが賞品として贈呈された。
EVEREST ELITE 750NC / E65BTNC
最終戦となる次戦は3ヶ月の間隔を空けて10月19〜20日に秋田県で開催される「どんぐりハチ公ラリー 」。全国から屈指の強豪ラリーストが集結するオールスターラリー内での最終決戦となる。3者にチャンピオンのチャンスが残る激戦のCUP-2クラスはどんぐりハチ公ラリーの結果でチャンピオンが決する。TRD Rally Cup by JBL初代チャンピオンに誰が輝くのか、その行方に注目したい。
※イベントレポートという性質上、文中で敬称を略して表現している個所があります。