本年レギュレーションである指定サスペンションの装着義務化により、さらにイコールコンディションに近い形でのクルーの実力勝負が期待される。初戦にも参戦したCUP-2(86)の吉原 將大・佐野 元秀組とCUP-1(ヴィッツ)の桒村 浩之・古本 舞桜組/髙木 充・西川 悠介組は実践投入においてアドバンテージはあるが、初のグラベルコースということもあり、どの選手にとってもチャンスがあると言える。
86/BRZ限定のCUP-2クラスには2台の86がエントリー。初戦において今橋 彩佳・保井 隆宏組の爆発的スピードに脅かされながらも勝利を勝ち取った吉原 將大・佐野 元秀組が引き続きエントリー。もう一台は、国内トップカテゴリーである全日本ラリー選手権において長年優勝争いを繰り広げるトップランカー奴田原文雄選手が立ち上げたラリー競技若手育成プログラム「NUTAHARA RALLY SCHOOLジュニアチーム」から小暮ひかるがエントリー。若干19歳ながらJAF全日本カート選手権で研鑽を積み、昨年はジムカーナへ参戦するなど貪欲にドライビングスキルを積み上げる若手ドライバーだ。なお、同じくジュニアチームから東 駿吾も参戦予定であったが、スケジュールの関係で本戦への参戦を見合わせ、代わりに南出 司がコ・ドライバーを努めた。
SS1、昨年のてっぺんラリーに参戦しマシンに大きなダメージを負ってしまった記憶の残る吉原・佐野組。「去年参戦してサスペンションを壊してしまったりボディの各所にダメージを負ったりと散々だった記憶があるコースですので、序盤は抑え気味のペースで行こうと決めてました。その点ではストロークを大きく確保できるサスペンションなので、深い轍やギャップでも不安なく踏んでいける感覚がありましたね。でも、SS1を走り終えて小暮選手のタイムを見たらギリギリで…早くスイッチ入れ替えなきゃ負けると焦りました」
そう語る通り、SS1の小暮・南出組のタイムは吉原・佐野組にコンマ2秒差に迫る好タイムをマーク。
今回がラリー初挑戦となる小暮は「ラリーへの参戦も86でアタックするのも今回が初でぶっつけ本番です。ヴィッツでグラベルも練習しましたが、挙動が全く違うので正直まだまだ感覚が掴めてないんです。初めてのラリーでこの路面はハードですが、いただいたチャンスを活かせるよう、精一杯攻めたいです。」と語る。
続くSS2。攻めの姿勢に切り替えた吉原・佐野組は快調にペースを上げ、仮想ターゲットとなる地区戦クラスの86に10秒近い差をつけてのフィニッシュを決める。対して小暮・南出組は吉原・佐野組からは6秒遅れたものの、地区戦クラスにも食い込むタイムを記録した。
2ループ目となる午後セクション。深く路面が掘られマシンの挙動が不安定となる難しい路面コンディションとなり午前よりタイムを落とす選手が多い中、SS3では吉原・佐野組は集中力を切らさない走りで見事タイムアップを果たす。タイム的にはまだ逆転の可能性が残る小暮・南出組はここでペースを上げていきたいが、走行中にフロントガラスが曇るトラブルのためペースを上げることは叶わなかった。
最終SSとなるSS4。その差は25秒ほどに開いてしまったが今後に繋げるためにも多くの経験を積みたい小暮・南出組。快調にペースを上げていったが、中盤ポイントで前走の地区戦車両が道を塞ぐ形でリタイヤしたため、以降の車両はSSキャンセルとなってしまった。これにより吉原・佐野組の勝利が確定した。
2戦連続で勝利を飾った吉原「去年は大雨の中でマシンを痛めながらなんとか勝てたという印象がある四国てっぺんでしたが、今回は天候にも恵まれて気持ちよく走ることができました。相変わらず路面はハードなものでしたが、車高の上げ方向には余裕があるサスペンションなので、余計なストレスを感じずに攻めることができたと思います。今回ライバルとなった小暮選手は初めてのラリーとは思えない走りでした。今回の2本目のSSはターマック区間があり、ここで気を抜いたら小暮さんに詰められると感じたので頑張って踏み抜きました。SS4は正直ギリギリの状態までプッシュしてて、キャンセルがなければ踏みすぎていたかもしれません(笑)。次戦の丹後半島は小暮さんに加え、スピードのある今橋さんが参戦すると聞いてますので、ターマックでも負けないよう頑張ります」。
ヴィッツ限定のCUP-1クラスには3台がエントリー。昨年の四国のてっぺんラリーにも参戦し得意のグラベルコースで見事優勝を飾った、地元四国出身の桒村 浩之・古本 舞桜組。今回が2戦目となる高木 充・西川 悠介組(正コ・ドライバーの草加 浩平は参戦キャンセルの為、若手の西川が代理で参戦)。そして今回からTRD Rally Cup by JBLに参戦することとなったベテラン小出 辰彦・松本 芳幸組の3クルーでの戦いとなる。
初戦でタイヤチョイスを誤り苦い経験をした桒村・古本組。「今回は反省を生かして新品タイヤを用意してきました。ここでは昨年勝ったとはいえ、油断すると負けてしまうことを前戦知りましたので全力で勝ちにいきます!サービスのサポートにも来てもらいましたので、言い訳はできない状況です」。
高木も昨年の四国のてっぺんラリーには参戦経験があるが、86でCUP-2への参戦だったため、ヴィッツでのアタックは初となる。
そして初参戦となる小出・松本組。競技歴は30年ほどの大ベテラン選手だ。「ここ10年ほどTGRラリーチャレンジに参戦していたんですが、参加台数が多く昨年はエントリーしてもほとんど受理されない状態が続いてました。そこで思い切ってTRD Rally Cup by JBLに参戦してみようと昨年末から車両を作りはじめました。なによりまず、走れることが嬉しいですね。楽しんでラリーしてきます。」と笑顔で語った。
SS1でトップタイムを記録したのは、やはり桒村・古本組だった。タッグを組んでちょうど一年目となるクルーだが、意見をぶつけ合える良いチームワークが構築され、今ではマシンセッティングの方向性も古本がマネジメントするまでになったという。
今回も桒村・古本組の独走かと思われたが、そのタイムに小出・松本組がわずか3秒差で迫る。「まさにガレ場って感じの路面ですね!20〜30年前に走ってたダートコースを思い出しました。こんな路面でもサスペンションのフィーリングはいいので、まだ踏めそうです」と虎視眈々とトップを狙う。昨年86で参戦したがリタイヤの苦い思い出がある高木・西川組。リベンジに燃える高木ではあったが、いま一歩リズムに乗り切れず出遅れてしまう。
実はサスペンションのセッティングが決まらず攻めきれなかったという桒村・古本組だが、続くSS2においてもトップタイムをマーク。セクション1終了時点で、続く小出・松本組に10秒以上のマージンを築いた。
多くのコーナーで深く路面が掘られてしまったセクション2は各車思うように走行できずペースダウンを余儀なくされてしまう。ただそんな中においても桒村はロスを最小限に抑えた我慢の走行を続け首位を死守した。セクション1で調子が上がらなかった高木・西川組もサービスでのリセッティングが功を奏したのか悪路のなかペースアップを果たすこととなる。
最後まで何があるかわからない四国グラベルラリー。気を緩めずに最終SSまで猛プッシュする各車ではあったが、前走車のリタイヤによりSSキャンセル。このまま桒村・古本組の勝利となった。
本戦においても、世界最大級オーディオメーカーで、家庭用オーディオ、ホームシアター、車載用などの民生機器から、世界中の映画館、スタジアム、レコーディングスタジオなどを対象とした業務用機器をラインナップするJBL(ハーマンインターナショナル株式会社、東京都台東区)からパートナーシップを受け、優勝クルーおよびU-25 AwardのクルーにはJBL製ヘッドフォンが賞品として贈呈される。
次戦は9月5~6日に京都・京丹後で開催される丹後半島ラリー2020。引き続き厳しい暑さが予想されるが、後半戦のターマックバトルに注目が集まる。
四国のてっぺんラリー2020 in 嶺北 正式結果
TRD Rally Cup by JBL 2020 シリーズポイントランキング
※イベントレポートという性質上、文中で敬称を略して表現している個所があります。