TRD Rally Cup by JBL 2020 Rd4 -丹後半島ラリー2020-


 9月5〜6日、京都府京丹後市を舞台として、丹後半島ラリー2020 が行われた。2020年JAF中部近畿ラリー選手権 第4戦 、2020年JMRC近畿SSラリーシリーズ 第2戦として開催された本戦にTRD Rally Cup by JBL 2020 Rd.4を編入しての開催となる。
当初8月22〜23日の日程で開催される予定であった本戦だが、新型コロナウィルスの影響により延期となっていた。前戦の四国のてっぺんラリー 2020 in 嶺北と同様、選手/スタッフともに新型コロナウィルス対策を徹底し、例年のギャラリーステージは設定せず、無観客での開催となった。森林公園スイス村を拠点とし、総走行距離133.58km/SS距離44.20kmで競われる。

 丹後半島ラリーは昨年もTRD Rally Cup by JBLのステージとなったが、今年は別の林道が設定された。先月開催された全日本ラリー選手権でも使用された林道ということもあり、ハイレベルなターマックラリーになることが予想された。また、当日は曇りとなったが前日深夜に降雨があり、ところどころ路面が濡れたままのコンディションとなった。

 今回設定されたSSコースは3本。それらを午前と午後で2本ずつ走行し、計6つのSSで争われることとなる。同じターマック路面とはいえ3本ともキャラクターの異なる林道なのが特徴だ。
SS1となる角突線は今回最長の9.32kmのコース。フラットな舗装で道幅も広めとなっているため比較的攻めやすいコースとなる。何度もアップダウンを繰り返すこととなるが、下り区間のスピードが高くなることが注意となる。また、全ステージの共通点でもあるが、側溝幅が広いのも特徴であり、タイヤを落としてしまうとコースに復帰できなくなる可能性もある。
8.42kmのSS2の成相線は角突線とがらりと変わりタイトでスリッパリーな路面となる。狭い道幅に加え、落ち葉や苔、日中も日陰となるため濡れたままの箇所が多く、多くの選手を悩ませることとなった。
長距離のリエゾンを挟んでのSS3、太鼓山線 。4.36kmの終始上り基調のこのコースは、きつい上りからの鋭角コーナーやリズミカルに繰り返すコーナーなど、単調なようで難しいコースとなった。

 


 本戦の直前に、10月に予定されていた第5戦「シロキヤラリー in 豊根・豊田」の中止がアナウンスされた。これにより本戦の結果を待たずにCUP-2(86)は吉原 將大・佐野 元秀組のシリーズチャンピオンが決定。CUP-1(ヴィッツ)は桒村 浩之・古本 舞桜組が髙木組に11ポイント差をつけていることから優位には違いないが、リタイヤしてしまうとひっくり返る可能性のある状況となった。

TRD Rally Cup by JBL 2020 Rd4 -丹後半島ラリー2020- エントリーリスト
当日の京都府京丹後市付近の天気

CUP-2




 86/BRZ限定のCUP-2クラスには4台の86がエントリー。
一足先にシリーズチャンピオンを決めた吉原 將大・佐野 元秀組。「あとちょっとのところで逃した2019年のリベンジを果たすために今シーズン参戦してきましたが、正直ラッキーの積み重ねで得たポイントだと感じています。今日ここで負けたら格好悪いチャンピオンになってしまうので、強力なライバル達に勝って改めてチャンピオンを名乗ろうと思います。」
 前戦から続けてエントリーとなる小暮ひかる・東 駿吾組。正コ・ドライバーの東 駿吾も参戦し、ターマックでの走りに注目が集まる。そして、開幕戦のMCA CAPRICCIO 2020ではリタイヤを喫したが、そのスピードで強烈なインパクトを残した今橋 彩佳・保井 隆宏組も参戦。「前回のリタイヤで保井さんやチームの方々に多くの迷惑をかけてしまったので完走は絶対です。フィニッシュしなければ何も結果が残らないのを痛感したので。でも…走る以上は…一番上を狙いたいですね」と抑えきれない気持ちを垣間見せた。なお、参戦を予定していた西村 公秀・奴田原 文雄組は不出走となった。

 そして始まったSS1、安定したスピードを見せたのは吉原・佐野組。 続く今橋・保井組に10秒以上のタイム差をつけてのフィニッシュとなった。注目の小暮・東組は序盤からリズムに乗り切れない。その焦りがミスを誘発することとなり、コースオフで側溝に車両を落としてしまいコース復帰は叶わずリタイヤとなってしまった。「ペースノートが不正確なのもとなってしまったのが原因です。レキのスピードと競技スピードの差分を考慮できてなかったので、コーナーのRから何から全てがズレてしまいました…せめて走りきって経験を積みたかったんですが…」と大きく肩を落とした。
 今橋・保井組もまたドライビングに違和感を感じ試行錯誤を繰り返してのアタックとなった。「どう走るのが速いのか悩み中です。保井さんの声をちゃんと聞いて反応することを第一に走ったんですが、結構大きなミスをしてしまい…コースに留まれただけでもラッキーでした。」
結局セクション1を終えて吉原・佐野組が30秒以上リードしての折返しとなった。

 サービスを挟んでのセクション2。2台の直接対決となったが、両者ともペースを順調に上げていく。前半で大幅リードを築いた吉原・佐野組だったが「午前のセクションは結構荒い運転になってしまいました。思った以上に滑る路面で苦しんだということもありますが、丁寧さに欠いたかな、と反省しました。午後は路面も走りやすくなっていくと思いますが、リード分もあるので慎重に攻めていきます。」と気を引き締めてのアタックとなった。
午前の結果から大きくタイムアップしていく今橋・保井組。SS5では吉原・佐野組に2秒上回るタイムでのフィニッシュとなった。「どうしてもブレーキングで突っ込みすぎてしまう癖があって…直さなきゃとは思うんですけど、それがタイムに繋がるのか半信半疑だったんです。SS5は午前にミスしてしまったステージなので、必要以上に慎重に早め早めのブレーキングに務めました。自分的には遅すぎかな?慎重すぎかな?というくらいの走りだったんですけど、結果トップタイムが取れちゃったので混乱してます(苦笑)。自分の中のタイムが出る走りのイメージと、実際タイムが出たSSのような走りのイメージが重なるように修行が必要ですね。色々あったけど、得るものは多かったです」

 続くSS6でも吉原・佐野組は快走を続け、結果50秒近くの差をつけてのフィニッシュ。堂々チャンピオンの走りを見せての優勝を決めた。

 吉原「勝ってチャンピオン決められてよかったです!来年は、去年Cup-1でシリーズチャンピオンを獲得して全日本ラリー選手権にステップアップした毛受さんに倣って、上のクラスへの参戦も視野に入れてます。でもTRD Rally Cup by JBLにも引き続き参戦していきたいですね」



CUP-1


 ヴィッツ限定のCUP-1クラスには4台がエントリー。シリーズチャンピオンに大手をかけた桒村 浩之・古本 舞桜組。「まだ安心できないとはいえ、気持ち的には余裕があります。」と笑顔で語る。
今シーズン初めてのヴィッツでの参戦となり、リズムに乗り切れてない印象の残る高木 充・安藤 裕一組。「全SSでSSポイントを獲得して、桒村さんを4位に抑えられれば逆転の可能性はあるんです。正直難しいとは思いますが、昨年一緒に戦った安藤さんが横に乗ってくれるので、心強いです。」
前戦は初参戦となった小出 辰彦・松本 芳幸組もエントリー。難易度の高いターマックバトルに気を引き締めた。
 そして今回初参戦となるのが塩田 卓史・西川 直治組。塩田はTRDラリーチャレンジ(現・TGRラリーチャレンジ)にコ・ドライバーとして参戦し幾度となく優勝を経験。近年では全日本ラリー選手権にも参戦している。「ドライバーとして正式なラリー競技に参戦するのは初めてです。車も出来上がったばかりでセッティングもなにもできてない状態ですが、ドライバーとしてどこまで通用するのか楽しみたいと思います。

 そして迎えたSS1。自身もジムカーナでドライバーをこなす古本のアドバイスを全面的に受け入れるという桒村。「最初は今までの自分の走りを否定されているような感じで違和感しかなかったんですけど、アドバイスが的確で実際にタイムが出てる。これはもう受け入れるしかないです。僕の知らないところでショップさんとセッティングの相談もしてたみたいで…頼りになります」と苦笑。しかし、その通りの好調な走りを見せた。
 しかし、そのタイムを上回ったのが高木 充・安藤 裕一組だった。コ・ドライバーの安藤は「去年タッグを組んだ際に取り組んだペースノートの改善をさらに突き詰めました。もともとスピードはあるドライバーなので、その長所は活かしつつ注意が必要な箇所を重点的におさえたノートになってます。うまくハマってくれたのでコ・ドラ冥利に尽きますね」と振り返る。勢いに乗る高木はそのままセクション1を全SSトップタイムで折り返すこととなる。


 スタート前はシリーズチャンピオン獲得に向け余裕を見せていた桒村・古本組だが、セクション1を終え空気が張り詰めていく。SSポイントを取れなくとも2位フィニッシュでチャンピオン獲得。そのうえ3位以下とのタイムは広がっている状況で優勢には違いないが、その分のしかかるプレッシャーは大きくなっていく。


 この状況でのリタイヤだけは避けたいと語った桒村であったが、午後のSS4ではシリーズポイント首位の意地を見せる走りで高木に0.2秒差での勝利。その後も桒村組と高木組での一進一退の攻防が続くこととなったが、これまでの鬱憤を晴らすかのような走りを見せた高木が40秒近くの差をつけて勝利を飾った。
注目の桒村・古本組は無事2位でフィニッシュ。2020年シリーズチャンピオンを決め、安堵の表情を見せた。

 初の参戦となった塩田組はSS走行ごとに減衰力を変更しセッティングを詰めての手探りの走りとなった。「マシンの特性を掴むのに苦労してます。とはいえまだまだセッティングの余地は大きくありますし、もっと速く走れるはずです。セクション1では2番手3番手タイムを出すこともできたので、自分がドライバーとしてやれる自信にはなりましたね」

セクション1で出遅れた小出・松本組。「ミスで大きくタイムロスしちゃいました…それでも距離の長いSSなので取り返せるチャンスはあると信じて必死に踏んでいきました。最終SSでは桒村さんに0.1秒差の2番手タイムだったので、惜しかったですね。勝ちたかった!」と笑顔を見せた。



 本戦においても、世界最大級オーディオメーカーで、家庭用オーディオ、ホームシアター、車載用などの民生機器から、世界中の映画館、スタジアム、レコーディングスタジオなどを対象とした業務用機器をラインナップするJBL(ハーマンインターナショナル株式会社、東京都台東区)からパートナーシップを受け、優勝クルーおよびU-25 AwardのクルーにはJBL製ヘッドフォンが賞品として贈呈される。

 開催二年目となったTRD Rally Cup by JBL。新型コロナウィルスを巡る情勢の中、開催も危ぶまれる状況であったが各地方の選手権関係者の多大な協力にもと無事終えることができた。選手権を戦う中で成長していく選手達に目が離せない展開となっていったが、また来年以降もイベントとしての熟度を上げ、ラリースト達のステップアップの土台となる中級者向けラリーイベントを盛り上げていきたい。




丹後半島ラリー2020 正式結果

TRD Rally Cup by JBL 2020 シリーズポイントランキング

※イベントレポートという性質上、文中で敬称を略して表現している個所があります。





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