シリーズが本格スタートして今年で3年目となるTRD Rally Cup by JBL。昨年は新型コロナウィルスの影響により全戦5戦のうち2戦がキャンセルとなってしまったが、指定サスペンションの装着義務化という新レギュレーションの下で白熱したバトルが繰り広げられた。2019年シーズンからCUP-2に参戦した吉原 將大・佐野 元秀組は昨年見事クラス優勝。そして今年、MATEX-AQTEC RALLY TEAMのサポートを受けヤリスで2021年全日本ラリー選手権に挑戦するチャンスを獲得。開幕戦の新城ラウンドではなんと全日本ラリー初参戦で優勝という快挙を成し遂げた。
86/BRZ限定のCUP-2クラスには岩田 晃知・増田 好洋組の86がエントリー。昨年のTGR ラリーチャレンジではE2(エキスパート86)クラスで出場ラウンドすべて優勝という完全勝利を成し遂げた岩田・増田組。今回、ラリーカップにステップアップしてのチャレンジとなった。
「TGRラリーチャレンジではチャンピオンを取れましたが、上の選手権でどの程度通用するのか挑戦してみようと思い今回参戦を決意しました。先日出場したTGRラリーチャレンジでラリーカップ指定サスペンションは試したんですが、まだまだ理解不足ですね。今回は初戦ということもありますので、すべて勉強する気持ちで臨みます。」と岩田。「昨年はラリチャレでチャンピオン取れましたが、若い子達のためにも次に進める選手はどんどんステップアップすべきと思いますので、今年はラリーカップを中心に参戦したいと思います」とコ・ドライバーの増田は語る。
雨足が強くなりだしたSS1。好調に走り出した岩田・増田組であったが、前走車が路面に出した岩を踏みバーストしてしまう。そのまま路肩でタイヤ交換を行いリスタートしたが、5分以上のロスとなってしまった。ラリー開始早々のアクシデントではあったが、気持ちを入れ替えてアタックを続行。その後のSS2では様子を見ながら、動きのチェックをしながらの走行。焦らずマシンの習熟に集中し、リピートとなるSS3・SS4ではともにタイムアップを果たす。午前のリバースとなるセクション2。次第に濃くなっていく霧に苦戦しながらも、徐々にマシンの挙動を掴み始めた岩田は地元の地区戦選手のランキングに割り込むタイムを叩き出していく。そのまま、残りSSもタイム更新し、無事ハードなラリーを終えた。
岩田は「いきなりタイヤのパンクがありハードなラリーとなりましたが、当初より競技スピードでのマシンの挙動確認とセッティングを勉強することを目的としていましたので、焦らず腐らずラリーを続けることができました。クラスに一台しか居ないのは寂しいですが、今回に限っては、いろんなことを試すチャンスだったのでラッキーでしたね。このサスペンションに合わせた走り方が必要になってくるかなとは思いますが、懐が深いので安心して踏んでいける感覚はあります。次戦も参戦する予定なので、より走りの精度を高めていきたいです」と次戦以降にも意気込みを見せた。
ヴィッツ限定のCUP-1クラスには2台がエントリー。昨年のTRD Rally Cup by JBLで見事CUP1チャンピオンを獲得した桒村 浩之は、モータースポーツ初心者のミキスケを新たにコ・ドライバーに迎えての参戦となった。今回のようなダスティで雨まじりな悪コンディションを得意とする桒村だが、新造コンビがどんな走りを見せるかにも注目が集まった。「去年はタイヤ選択で欲を出したのが仇になって、この九州戦でピエール北川さんに負けてしまいました。一年間ずっとその悔しさが残ってたので、今回ピエールさんはいませんが、最初から気を抜かずに全力で行きます!」と桒村。
CUP-1へのもう一台のエントリーは、地元選手の田島 宏司・新原 秀直組。昨年もTRDラリーカップと併催されたMCA CAPRICCIOの地区戦部門に参戦していた田島・新原組。モータースポーツを始めて2年ほどの選手だが、思い切りの良い走りを見せていた。
雨が強くなり、桒村にとってはテンションが上がるコンディションへとなっていったが、初心者のミキスケにとっては過酷なスタートとなった。お互い実戦は初めてとあり、様子を見ながらのスタートとなったが、滑り出しは好調。上り区間の比率が多いセクション1ではマシンパワーに苦労しながらも地区戦選手に食らいつくタイムを記録していく。また、田島・新原組も桒村・ミキスケ組には遅れるものの、存在感を示す走りを見せる。
続くセクション2、時間経過とともに霧が濃くなり、有視界が狭められていく。コ・ドライバーの力量が試される場面となり、初心者のミキスケには荷が重い状況となっていくが、そんな局面でもしっかりコ・ドライバーを務めた。「セクション1は車の動きに身体がついていけずロストしたり体調が悪くなったりしたんですが、セクション2はロストせずに読み上げることができました。とはいえ、まだまだですが…」とミキスケ。
CUP-2の岩田86のみならず地区戦部門にも勝るタイムを刻み続ける桒村だったが、SS7で路上に転がり出た岩によりフロントタイヤをバーストしてしまう。運良くフィニッシュまで走り切れたことで、即タイヤを交換できピンチを免れた。そのままSS8もTRDラリーカップ部門最速タイムでフィニッシュ。優勝を決めた。
ラリー後、田島は「いやぁ、皆さん速いですね…どこをどう詰めればもっと速く走れるのか、まだまだ課題は山積みです。でも日頃のストレスの解消ができました(笑)」と苦笑いで語ったが、モータースポーツ歴2年程度とは思えないスピードと安定した走りを見せていた。
クラス優勝を決めた桒村は「どうしてもマシンパワーが苦しいところがあり当初から下りでの勝負に賭けていたんですが、雨が降ってくれたおかげで、その差はさらに縮めるとこができたと思います。タイヤを減らすのが嫌で、雨の練習ばかりしてましたが、それが活きましたね。去年のMCA CAPRICCIOは貧乏性故に負けましたが、こんな雨の日でも踏んでいけるのは貧乏性の練習方のおかげですかね(笑)。今回コドラをやってくれたミキスケさんも、午前はロストしたりもしましたが午後はロストしなかった。読み上げのタイミングなど詰めるところはもちろんありますが、初めてでここまで出来るのは素晴らしいです!」と、勝利に笑顔を見せた。
地区戦部門に自身の86でドライバー参戦していた昨年のパートナーの古本選手が「桒村さんは調子に乗る走りをするから、コドラがコントロールするんだよ」とアドバイスする一幕もあった。
2021年シリーズも、世界最大級オーディオメーカーで、家庭用オーディオ、ホームシアター、車載用などの民生機器から、世界中の映画館、スタジアム、レコーディングスタジオなどを対象とした業務用機器をラインナップするJBL(ハーマンインターナショナル株式会社、東京都台東区)からパートナーシップを受け、優勝クルーおよびU-25 AwardのクルーにはJBL製スピーカーが賞品として贈呈された。
次戦は4月17日に群馬県で開催されるネコステ山岳ラリー2021。昨年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で中止となってしまったが、今年は開催の予定となっている。地元のラリーファンが、共に楽しんで作り上げるラリーとして定評がある。どのようなバトルになるか期待したい。
MCA CAPRICCIO 正式結果
TRD Rally Cup by JBL 2021 シリーズポイントランキング
※イベントレポートという性質上、文中で敬称を略して表現している個所があります。