TRD Rally Cup by JBL 2021 rd.4 -四国のてっぺんラリー2021 in 嶺北-


 7月31日、高知県土佐郡大川村を舞台として、四国のてっぺんラリー2021 in 嶺北が行われた。2021年JAF中四国ラリー選手権第3戦 2021年JMRC中国・四国ラリーシリーズ第3戦 、西日本グラベルラリーツアー2021第2戦 として開催された本戦にTRD Rally Cup by JBL 2020 Rd.4を編入しての開催となる。コロナ対策により大幅な距離短縮となった昨年から若干距離を延長し、総走行距離約100km/SS距離約約32kmのコースでの開催となった。
 TRD Rally Cup by JBLが正式にスタートから毎年ラウンド編入され定番ステージとなった本ラリー。愛媛県と高知県の県境に位置する嶺北エリアはコブシ大の鋭利な石の路面が特徴で、非常に難易度が高いグラベルラリーとなる。変わりやすい天候に加え、走行する度に状況が変化する路面状況にも注意が必要となる。

 今回設定されたSSコースは2本。それらを午前に2ループ、午後に1ループ走行し、計6つのSSで争われることとなる。どちらのコースも路面状況が次々と変化していき、さらさらしたスリッパリーな砂地路面を越えた次のコーナーは大粒の岩石の路面になるなど、マシンコントロールに苦心することとなる。昨年・一昨年のてっぺんラリーの逆走となるため、本ラリーの走行経験のある選手にとっても新鮮なコースとなった。
 ASHIDANI SHORTは下りを多く含む4.831kmのコース。スタート直後はターマックとなるが、細かい浮き砂が広がっているため路面ミューが低くスリッパリーなコンディション。途中からグラベル路面となるが、石のサイズが大きい、いわゆるガレた路面となる。
 KANPUU R LONGは6.141kmのコース。ガードレールの先は崖という視覚的にもプレッシャーがかかるコースとなるが、前半からハードな下りが続く。路面の砂利(石)のサイズも刻々と変化するため、グリップレベルの違いに注意が必要となる。
 今回のラリーは合計6本の走行となるため、午後のSSの頃には路面には深い轍が作られていくこととなる。轍に完全にライン取りをどうするかが重要なテクニックとなっていく。



 当日は早朝から日差しが強く照りつける快晴。連日猛暑が続いているため路面も完全ドライとなり砂埃が大きく舞う状態での走行となっていく。前走の地区戦は30台中9台がリタイヤというサバイバルラリーの様相を呈した。

TRD Rally Cup by JBL 2021 rd.4 -四国のてっぺんラリー2021 in 嶺北- エントリーリスト
当日の高知県土佐郡大川村付近の天気

CUP-2/CUP-1




 86/BRZ限定のCUP-2クラスには岩田 晃知/増田 好洋組がエントリー。「今回もライバルが居ないのが寂しいですが、こんなにハードなグラベル林道は初の挑戦なので、他の人のことを考えてる余裕はないかもしれませんね。自分自身が最後まで完走することに集中して、その中でも様々なチャレンジに取り組めればと思います。本戦に向けて、新品タイヤを用意して、車高も目一杯上げてきました。どんなラリーになるか緊張しますが、楽しみです!」と笑顔の岩田。

 地区戦最後尾のハイラックスとCUP-1のヴィッツに囲まれての走行とありステージ毎の比較対象車がいない状況でのアタックとなった岩田。自分がどのくらいのペースで走れているか、ちゃんと攻められているのか自問自答しながらの、まさに自分との戦いとなっていった。

 「レキの段階で既に深い轍が出来てしまっていて、どう走ろうかと悩みましたが、ラリーが始まったらさらに路面状況が大きく変わってしまい、悩んでる暇もなかったですね。掘られていく轍のどの場所を使って走るのが一番速いのか実戦で試せたのは良かったです。とはいえ後半は轍にタイヤをはめてしまうと完全にボディ底を打ち付けながらの走行になってしまうので、ある程度山に乗せてないと走れなかったです。全日本でもここまで凄い路面のステージは少ないと思うので、こういった経験ができたのは、上のステップを目指す上で良い経験になりました。」
様々な試行錯誤を実戦で重ね経験値を積んでいく岩田・増田組。3回目のリピート走行となるセクション2では、きっちり自身のベストタイムを記録する走りを見せた。

 ヴィッツ限定のCUP-1クラスには5台がエントリー。昨年の四国のてっぺんラリーにも参戦し得意のグラベルコースで見事優勝を飾った地元四国出身の桒村 浩之・ミキスケ組。小出 辰彦・松本 芳幸組、山下秀・HARU組、北川・漆戸あゆみ組、そして辻井 利宏・新井敏弘組のエントリーとなった。

 前戦において失格処分となった桒村 浩之・ミキスケ組は「いなべ東近江ラリー2021では多くの方に迷惑をかける結果となってしまいました。原因となった箇所は根本から修理してきました。大好きな四国のグラベルコースですので、気持ちよく走りたいですね」と気持ちを入れ替えた表情を見せた。

 いなべから連続参戦となるが、今回はなんと全日本ラリー選手権トップドライバーの新井敏弘をコ・ドライバーに迎えての参戦となった辻井 利宏。「前回は車と自分とがうまく噛み合わなくて、調子が上がる前に終わってしまった。でも今回は得意なグラベルラリーということで、走りには自信がありますよ。ただ今回はコ・ドライバーと噛み合うかどうかが問題だね(笑)」そう語る辻井だったが、この二人のコンビは30年来のものだという。元チームいすゞのチームメイトで、辻井がコ・ドライバーを努めて海外ラリーに参戦した経験もあるコンビ。今年5月に徳島県で開催された「つるぎ山アルペンラリー2021 」にも同コンビで参戦し、見事完走を果たしている。

 昨年のてっぺんラリーがTRD Rally Cup by JBLへの初参戦となった小出・松本組。7台のヴィッツが参戦した激戦のいなべラウンドでは見事2位表彰台を獲得し、調子を上げてきている。レキを終え「今年もすごい路面ですね。車を壊しながら走る感じで、完走するのも一苦労な感じです…実は次戦丹後半島にエントリーするかどうか悩み中ですが、今回勝てたらチャンスにかけてみようかと。今回次第ですね。」と気合を入れる。

前戦、クラッシュにより一からマシンを造り直して参戦したがエンジントラブルに泣かされたピエール北川・漆戸あゆみ組。2年前にTRD Rally Cup by JBLに初参戦したのもまた、四国のてっぺんラリーだった。その際は桒村を抑えてSSベストタイムを記録するなど、鮮烈なデビューを飾った。「あの時は怖いもの知らずだったんです…(苦笑)。初めてのグラベル、もちろんこんなにも荒れた路面は初めてでしたので、どの程度踏んでいいのか、どの程度我慢すべきななのか分からないままのアタックで記録した一本でした。今思うと恐ろしいですね…前戦ではマシントラブルで大幅ロスをしてしまいましたので、今回はバッチリ決めたいです」とピエール。しかし、レキを終えて「もうちょっと車高上げなきゃ危険ですね…」と漏らす。

ラリー挑戦3戦目となる山下・HARU組も、レキで走行した路面状況に閉口。「グラベルラリー初体験なのですごく緊張しています…掘られる路面ということは聞いていたので、轍の走り方を先輩に教えてもらってきました。毎回完走を第一目標にしてますが、今回は本当に完走しなきゃですね…」と緊張した面持ち。


 SS1、やはりタイムを記録したのは桒村・ミキスケ組。その後に5秒差で辻井・新井組、小出・松本組と続いた。前戦の雪辱を晴らしたいピエール・漆戸組だったが、スタート直後のターマック区間で曲がりきれず土手に乗り上げてしまった。その際にアンダーガードにダメージを受け変形させてしまったのが影響し、グラベル区間でアンダーガードを大きく破損。ついにはガードを脱落してしまった。アンダーガード無しでのアタックは確実にマシンを壊してしまう路面だったため、以後スローペースでの走行を余儀なくされる。

 全域グラベル路面となるSS2。快調にアタックする桒村・ミキスケ組だったが、辻井・新井組が直後1.5秒差に迫る走りを見せる。続くSS3、またもトップタイムは桒村・ミキスケ組。辻井・新井組が健闘するも、苦手意識のあるターマック路面に苦戦し5.6秒差となる。そのミスを挽回したい辻井は得意のKANPUU R LONG(SS4)でも好走を見せる。桒村には届かなかったが、SS2での自身のタイムを7秒短縮。桒村とのタイム差も1.1秒に短縮してのフィニッシュとなった

 セクション1を終えて、辻井は「やっぱりグラベル路面は走るのが楽しいですね。確かに難しい路面ですけど、新井くんの的確なペースノート読みに助けられてます。実はスタート直後のターマック区間で側溝にマシンを落としちゃって…オールグラベルSSでは挽回できたかな」。そこで新井「横で見てて危なっかしいからペースノートだけじゃ追いつかないんだもん。だから『もっとアクセル踏める!』とか『まだブレーキ踏まない!』とかペースノートに無いことばかり叫んでた。おかげでいっぱいロストしたけど(笑)」と茶々を入れる。

桒村も「楽しく走れてますが、午前の走行で左フロントタイヤに大きなキズが入ってしまいました。このまま走ってもいいかと思ったんですけど、辻井さんが迫ってきてますので、万一に備えて新品タイヤに交換しておきます。」

 桒村と辻井の2台の勝負となってのセクション2。「疲れで集中力が切れていた」と語る辻井が、苦手とするターマックミックスのこのステージで再び側溝にマシンを落としてしまう。このミスで、脱出に手間取ってしまい大きなタイムロスを喫してしまった。桒村は3本目となるASHIDANI SHORT SS(SS5)で本日トップタイムを記録。
このまま引き下がれない辻井・新井組。最終SSで気迫のアタックを見せ、桒村に2.1秒差をつける本日初めてのクラストップタイムを記録した。
しかし大きく開いた差は埋まらず、結果は桒村・ミキスケ組が40秒近い差をつけての優勝を決めた。

 桒村「次戦の丹後半島ラリーには参戦できない予定だったので、今年最後の参戦となるTRD Rally Cup by JBLで勝てて良かったです。フィニッシュ後、タイヤをチェックしたら左フロントタイヤに大きなキズがあり、スローパンクチャーを起こしてました…同じ左フロントタイヤへのダメージですので、サービスでタイヤ交換してなかったらリタイヤだったかもしれないですね…」と安堵の表情を見せた。

 健闘した小出・松本組だったがセクション2はスローペースに。「前の2組に追いつけないと判断したので、セクション2は完走ペースに切り替えました。今回の結果次第では最終戦にもエントリーしようと思ってたんですけど、今季はこれで締めとします。とにかくマシンが壊れなくて良かったです…」

 山下・HARU組もまた、無事に完走できたことに安堵。「こんなにもハードなグラベル路面は二人とも初めての経験だったので、まず完走できてよかったな、と。ペースノートを読むタイミングを早くしたりとかいろいろ試してみましたが、とても難しかったです。」と胸を撫で下ろした。

 セクション1でマシンにダメージを負ってしまったピエール・漆戸組は、他チームの協力もありサービスタイム内でマシン修復を敢行。無事完走を果たした。「アンダーガードを途中で落としてしまったので、セクション2はアンダーガード無しで走行しようかとも思ってたんです。でも、サービスに戻ったらオフィシャルの方がガードを届けてくれてて…そしたら周りの皆さんが次々助けてくれて、サービスアウトギリギリで修復できたんです。ステアリング周りにも違和感があったんですけど、それも直してくれて…本当に感謝しかないです。走りの方は、ペースノートの作り方・走り方が根本的にレベルに達してない。まだまだ修行が必要だと実感しました。でも、TRD Rally Cup by JBL(地区戦)の中で走ったからこそ気づいた自分の足りない部分であるとか速い選手との違い、地区戦を戦う諸先輩方との繋がりなど…このラリーに出たことで得たものはかなり多かったです。まだまだですが、確実にレベルアップできたと思います。」と熱を持って語った。







 2021年シリーズも、世界最大級オーディオメーカーで、家庭用オーディオ、ホームシアター、車載用などの民生機器から、世界中の映画館、スタジアム、レコーディングスタジオなどを対象とした業務用機器をラインナップするJBL(ハーマンインターナショナル株式会社、東京都台東区)からパートナーシップを受け、優勝クルーおよびU-25 AwardのクルーにはJBL製スピーカーが賞品として贈呈された。


 TRD Rally Cup by JBL 2021の最終戦となる次戦は、8月21日〜22日に京都府京丹後市を舞台として開催される「丹後半島ラリー2021」。本戦から短いスパンでの開催となるが、暑さの残る京都決戦での熱い戦いに期待したい。


四国のてっぺんラリー2021 in 嶺北 正式結果

TRD Rally Cup by JBL 2021 シリーズポイントランキング(準備中)

※イベントレポートという性質上、文中で敬称を略して表現している個所があります。





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