TRD Rally Cup by JBL 2021 Rd5 -丹後半島ラリー2021-


 8月21〜22日、京都府京丹後市を舞台として、丹後半島ラリー2021 が行われた。2021年JAF中部近畿ラリー選手権、第5戦 2021年JMRC近畿SSラリーシリーズ 第3戦 として開催された本戦にTRD Rally Cup by JBL 2021 Rd.5を編入しての開催となる。本年もコロナ禍の影響を少なからず受けた一年となってしまったが、予定通りTRD Rally Cup by JBLは全戦開催することができた。


 丹後半島ラリー2021は昨年同様通り森林公園スイス村を拠点としてのルートとなったが、昨年3本設定された林道は2本に縮小。しかし、一本の距離を伸ばすことによって、SS距離44.94kmと昨年よりもロングコースの設定となった。また、午前に走行したSSをそのまま逆走するコース設定となり、リピートSSのない珍しいラリーとなる。


 角突線は9.50kmのコース。フラットな舗装で道幅も広めとなっているため比較的攻めやすいコースとなる。何度もアップダウンを繰り返すこととなるが、SS1では下り区間のスピードが高くなるため注意が必要となる。また、側溝幅が広いのも特徴であり、落としてしまうとコースに復帰できない可能性もある。そして今回のラリーの目玉となったのが13.03kmの成相線。タイトでスリッパリーな路面から、舗装された広い路面までキャラクターが変化していく。中間地点は狭い道幅に加え、前日の風で路面に散った落ち葉や苔、日中も日陰となるため濡れたままの箇所もあり、多くの選手を悩ませることとなった。また、10km超えのSSということもあり、体力と集中力が試されることとなった。



 事前の天気予報では不安定な天候が予想されたが、ラリー当日は朝から快晴。強い日差しが差し込むこととなったが、午後になると天候は一転し突然の大雨となるなど、波乱の展開となっていった。


TRD Rally Cup by JBL 2021 Rd5 -丹後半島ラリー2021- エントリーリスト
当日の京都府京丹後市付近の天気

CUP-2/CUP-1





 86/BRZ限定のCUP-2クラスには全戦エントリーを果たした岩田 晃知・増田 好洋組と、いなべ東近江ラリーに続いての参戦となる上林 勇・森 博則組の2組がエントリー。毎戦、課題意識を持ってスキルアップに繋げたいと話す岩田。「毎回、初めて走るコースでのチャレンジとなりますが、だからこそ得られるものは多いと思っています。初見のコースでレキを行いペースノートを作る。初めて走る道だからこそ、上位に食い込む走りをするためには集中して精度の高いノートを作り上げるスキルが必要となります。今日のラリーは10km超えのSSがあり、一本もリピートがないというなかなか経験できないコースとなりますので、集中力を維持して頑張りたいです」と語った。一方、上林・森組も負けられない。いなべ東近江ラリーでは久々のラリーということで岩田の後塵を拝したが、そのリベンジとなるか。


 そしてスタートしたSS1。早々に岩田が07’47.40’ と、仕様こそ違えど86が参戦する地区戦のDE-2クラスに割って入る好走を見せる。続くSS2では上林・森組も奮闘。SS1では岩田・増田組と大きく開いてしまったタイム差であったが、タイム差を詰める走りを見せた。
午前の走行を終えて岩田は「実はSS1は勢い良く行き過ぎてオーバーランしかけちゃったんです。メリハリある走りを意識しなきゃと思ってるんですけど、気持ちが焦りすぎましたね」と冷静に振り返る。


 リバースコースとなる午後のセクション。これまでの晴天から一転、突然の雨が選手を襲う。突然の大雨で上林・森組はフロントガラスが全面曇り視界が悪化してしまうが、冷静に対処し走行を続行。両クルーともハイレベルなロングSSを走りきった。結果、岩田・増田組がクラス優勝・全体17位で走りきった。


 無事完走した上林は「今回は前回のいなべ東近江ラリーよりもしっかり攻めきれた感触があり、レベルアップできたんじゃないかと思ってます。距離が長くてSS1、SS2は慣れるまで大変だったけど、午後はペース配分も上手く出来たので疲れずに走れました。ただ、突然雨が降ってきてフロントガラスが曇ってしまった時は焦りましたね…ヒーターつけたのでだいぶロスしてしまった。そこがちょっと消化不良かな」と笑顔で語った。

 岩田は「長いSSでしたが、トラブルなく走りきれたので安心してます。中高速コースということでスピードが出ることは分かってたので、踏むところは踏んで、抑えるところは抑えるように意識して走りました。雨が降ってきましたが、午後のステージはそんなにスピードは出なかったので、落ち着いて対応できました。10km超えるコースは大変でしたが、このくらい距離があるほうが楽しいですね。なかなか出来ない体験でした。ただ、オーバーランで増田さんを焦らせちゃったのでロスト誘発しちゃいました。コ・ドライバーが集中してリーディングできるように破綻なく走るのもドライバーの役割ですね」と振り返る。

  今季、見事CUP-2チャンピオンを獲得した岩田。来年以降は検討中とのことだが、今年自分との戦いの中で得た経験を活かし、さらなるラリースキルアップを期待したい。



 ヴィッツ限定のCUP-1クラスには3台がエントリー。2021年シリーズチャンピオンが確定した桒村 浩之・ミキスケ組は不参戦となったが、TRD Rally Cup by JBL Rd.3 いなべ東近江ラリーで初優勝を飾った塩田 卓史・中根 達也組がエントリー。そして、秋田県で開催予定であった全日本ラリー選手権 横手ラリーが新型コロナウイルスの影響によりキャンセルとなったことにより、本戦も辻井 利宏が新井敏弘と再度タッグを組んでエントリー。そしてネコステ山岳ラリー 2021から4戦連続で参戦となる山下秀・HARU組のエントリーとなった。

 2勝目の期待が高まる塩田は「今回も、もちろん勝ちにいきたい。こんなに長いSSは走ったことがないけど、レキで走った感じだとリズミカルに攻められる印象。ロールして曲がっていくTRDのサスペンションの特性がコースに合っている印象がある。」とレキを終えて語った。

 全日本トップドライバーの新井選手とタッグを組み注目を集めた辻井は「てっぺんではいい感じに走れたから、あの感覚を忘れないうちにと、今庄の走行会で新井選手のレッスンを受けたんです。やはりトップドライバーからレクチャー受けると違いますね。今回は本当は横手ラリーだったんだけど中止になっちゃったから「暇だろ?横乗ってよ」って感じで呼んじゃいました(笑)。苦手意識があるターマックだけど、優勝に絡めればいいね」と自信を見せた。
2021年シリーズポイントは今回不参加の桒村が独走状態で1位となったが、2位は塩田の19ポイント。3位の辻井が11ポイントと、今回の結果によっては変動も起こりうる可能性がある。


 そして始まったセクション1。SS1で塩田・中根組が好走を見せるも、それを3秒更新してクラストップタイムを記録したのは辻井・新井組だった。

 前日のレキを終えた段階ではアクセルを踏んでいく自信がなかったという辻井。「昨日、自信なさそうにしてたら、宿への帰りしな新井選手がゆっくりドライブしながらレクチャーしてくれた。今庄の練習会で、新井選手が全開ドライブしながら『これはオーバーステア、これはアンダーステア』って丁寧に一つ一つ挙動を言語化してくれた経験があったのが大きかったですね。ペースノートと自分の走りの擦り合せができた感覚がありました。」
絶好調の辻井・新井組は、続くロングのSS2で塩田に13秒差をつけてのフィニッシュを決めた。


  突然雨が振り出したセクション2。負けられない塩田・中根組はこの雨に勝負をかけた渾身のアタックを敢行。見事後続に5秒差をつけてトップタイムを奪取した。しかし続く最終SS4で辻井・新井組が猛烈プッシュ。20秒近くの差をつけてフィニッシュし、見事初優勝を決めた。


 惜しくも2位で終わった塩田は「全体的には悪くはなかったけど、ちょっと乗り切れなかったかな。丹後ではいつも雨が降るので、それは想定内だった。もっと降ってくれれば前半の遅れを取り戻せるかなと思ったんですけど、早々に雨が止んだこともあって思ったほど荒れなかったですね。中高速コースの走り方がイメージ通りに行かなかったのも敗因かな。今年3戦出るのを目標としてたので、それは達成できた。その中で優勝も出来たので、成果は大きかったかな。最後辻井さんに負けちゃったけど、辛うじてSS1本取れたので、シリーズ2位で終えられて結果良かったんじゃないでしょうか」と晴れやかに語った。


 今回、見事初優勝を飾った辻井「SS3で雨が降ってきたからセーブして走ったら塩田くんに5〜6秒負けちゃって…そしたら横の新井は文句言うし、SSストップにいたオサム(全日本ドライバー福永修選手)からもあれこれ言われるしで、『コンニャロー!』って感じでSS4を走りました(笑)。今回勝てたことで、中高速コースであればターマックにも自信持てるようになるかな。」「今年3戦走りましたが、地区戦の距離で走ると一戦一戦の経験値が段違いでですね。新井くんに乗ってもらったのは確かに大きいですが、確実に走りがレベルアップするのを感じられる。速くなりたいんだったら、やはりSS総距離の長いラリーに出たほうが絶対成長する。それは自分の身を持って体験しましたね。でも今年チャンピオン取れなかったから、来年も出ちゃおうかな」とニヤリ。


 3位で完走した山下は「SS距離、長かったですね。5km以上のSSがそもそも未経験なので10kmオーバーは堪えましたね…短いSSは楽しく攻められたが、ロングの方の2本は集中力が切れかけました。そのうえ雨が降ってきたSS3はどこが濡れているのか分からなかったので探り探りの走行になってしまいました。それでもぶつけずに無事完走することができたので、及第点ですかね。車も仕上がって、「KYB U-25 MVD賞」でサスペンションもいただけるということなので、来年も引き続き上位を目指して挑戦できたらいいなと思います。」







 2021年シリーズも、世界最大級オーディオメーカーで、家庭用オーディオ、ホームシアター、車載用などの民生機器から、世界中の映画館、スタジアム、レコーディングスタジオなどを対象とした業務用機器をラインナップするJBL(ハーマンインターナショナル株式会社、東京都台東区)からパートナーシップを受け、優勝クルーおよびU-25 AwardのクルーにはJBL製スピーカーが賞品として贈呈された。

 本戦でTRD Rally Cup by JBL 2021の全スケジュールは終了となったが、来年も更に内容を充実させ新規参加者を迎え入れるための準備を進めてまいります。


丹後半島ラリー2021 正式結果

TRD Rally Cup by JBL 2021 シリーズポイントランキング(準備中)

※イベントレポートという性質上、文中で敬称を略して表現している個所があります。





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