7月30日、高知県土佐郡大川村を舞台として、四国のてっぺんラリー2022 in 嶺北が行われた。2022年JAF中四国ラリー選手権第3戦、2022年JMRC中国・四国ラリーシリーズ第3戦 、西日本グラベルラリーツアー2022第2戦として開催された本戦にTRD Rally Cup by JBL 2020 Rd.2を編入しての開催となる。コース全長は昨年と同等程度となる総走行距離約102km/SS距離約約29kmの工程での開催となった。本戦には残念ながらCUP-2への参戦車両は無く、ヴィッツのCUP-1のみの出走となった。
TRD Rally Cup by JBLの中でもハードなグラベルラリーとして定着している本戦だけに、エントラントとしても参戦に準備と心構えが必要となるようだ。
愛媛県と高知県の県境に位置する嶺北エリアはコブシ大の鋭利な石の路面が特徴で、非常に難易度が高いグラベルラリーとなる。急接近した低気圧の影響で早朝から雨が降り始め、路面は完全にウェットでのスタート。著しい路面変化と荒れる展開が予想された。
今回設定されたSSコースは2本。それらを午前に2ループ、午後に1ループ走行し、計6つのSSで争われることとなる。どちらのコースも路面状況が次々と変化していき、さらさらしたスリッパリーな砂地路面を越えた次のコーナーは大粒の岩石の路面になるなど、マシンコントロールに苦心することとなる。アップダウンを繰り返すステージとなるが、開催年によって進行方向を入れ替えての開催となる。今年は昨年同様のルートとなった。
ASHIDANI SHORTは下りを多く含む3.60kmのコース。昨年設定されていたスタート直後のターマック部分はカットされ、スタートからグラベル路面となる。スタート直後は走りやすい路面だが、徐々に石のサイズが大きくなり、いわゆるガレた路面となっていく。
KANPUU R LONGは6.01kmのコース。前半からハードな下りが続くが、ガードレールの先は崖という視覚的にもプレッシャーがかかるコースとなる。ASHIDANI SHORTに比べて石のサイズは小さくなるが、掻き出された石が露出するため、グリップレベルの違いに注意が必要となる。
今回のラリーは合計6本の走行となるため、午後のSSの頃には路面には深い轍が作られていくこととなる。ライン取りの際、轍をどう処理するかが重要なテクニックとなっていく。
レキから降り続く雨はSS1スタートの頃にピークとなり、激しく降りつけることとなった。マシンへのダメージが大きいことから、昨年は多くのリタイヤがあったサバイバルラリーだが、ハードな路面と雨と霧による視界悪化がどのような結果をもたらすかに注目が集まることとなった。また、前走車の走行によって大きなサイズの岩が路面に転がり出ることもあるため、路面に神経を尖らせてのアタックとなる。
ヴィッツ限定のCUP-1クラスには3台がエントリー。初戦ACK スプリングラリー 2022で着実にポイントを重ねた塩田 卓史が続けて参戦。コ・ドライバーの中根 達也が諸般の事情により不参加となったため、急遽チーム員の木下 広紀をコ・ドライバーに迎えての参戦となった。「てっぺんは参戦するかどうかすごく悩んだんですけど、前戦でポイントを稼げたので今回も出ようかと。ただ、ドライバーとして林道グラベルに参戦するが初めてなのと、マシンへのダメージが心配ですね。レッキでも結構ヤバいなと感じたので、序盤は様子見で…」と塩田。
初参戦の山岡 信雄・内藤 通孝組は九州からの参戦。グラベルラウンドを中心にEK9シビックで全国のラリー参戦を続けてきた山岡だが、今年からヴィッツに乗り換えTRD Rally Cup by JBLへの参戦を決めた。
四国のてっぺんラリーや徳島でのつるぎ山アルペンラリーへの参戦経験が豊富なことから今回の優勝候補筆頭となる山岡は「前戦のつるぎ山ではFGC1クラスで優勝したから、今回も優勝したいね。とは言ってもクラス一台しかいなかったけど(笑)」と冗談めいて話したが、同ラリーでダブルエントリーしていたFG4クラスでも2位獲得していたことから、言葉に自信が伺える。なお、本戦も2022年JAF中四国ラリー選手権第3戦のFG4クラスへダブルエントリーでの参戦となる。
そして、こちらも初参戦となる橋本 美咲・小藤 桂一組。コ・ドライバーとして精力的にキャリアを積み、全日本ラリー選手権での優勝経験もある橋本だが、ドライバーとしてのラリー参戦はこれが3戦目となる。さらにグラベル林道は初ということで出走前は緊張の面持ちだったが「とにかく絶対完走です!」と力強くスタートを切った。
SS1、前走者によってすでに掘り起こされた路面に苦戦しながらも全車果敢にアタックしていく。まず飛び出したのはグラベルが得意と語る山岡・内藤組。今回のCUP-1のエントラントの中で最も四国の道を知る山岡は、SS1で後続に45秒近くの差をつける巧みな走りを見せた。なお、これはダブルエントリーしている中四国ラリー選手権FG4クラスでも首位のタイムとなる。
そして2番手に続いたのが橋本・小藤組。初めてのグラベル林道とは思えない思い切りの良い走りでポイントリーダーの塩田を上回った。
雨も止みだした頃、続いて6kmのSS2がスタート。ここでも山岡・内藤組のスピードは落ちず、後続をどんどん突き放していく。そして、このSSで2番手タイムを記録したのは塩田・木下組。しかし橋本・小藤組に対して順位を取り戻すほどのリードは築けなかった。
SS1のリピートとなるSS3。山岡・内藤組、塩田・木下組らが一本目の自身のタイムから落とす中、橋本・小藤組が10秒以上のタイムアップを果たす。その勢いをキープしたい橋本・小藤組であったがSS4で痛恨のミス。コーナーで減速しきれず、あわや正面から壁に激突しそうになる。すんでのところで回避しコースに復帰することができたが、その処理で大きくタイムロスしてしまった。
セクション1を終え、山岡・内藤組は中四国ラリー選手権FG4クラスのトップ争いを演じる走りを見せる。続く橋本・小藤組も勢いのある好走で塩田・木下組に1分近くの差をつけてのサービスインとなった。しかし例年荒れることが多い四国のてっぺんラリーだけに、1分の差が簡単にひっくり返る可能性が高いことは両クルーともに感じていただろう。
残すはセクション2の2本のSSのみ。CUP-1での勝利はほぼ確定しているが、FG4クラスでのデッドヒートが続く山岡・内藤組はアクセルを抜くことなくプッシュを続け、そのままフィニッシュ。見事FG4クラスでも優勝を決め、ダブルウィンとなった。
2位争いは、変わらず好走を見せた橋本・小藤組がゲット。セクション1ではKANPUU R LONGのSS2、SS4で塩田に遅れをとっていたが、最終SSでは塩田のタイムを大きく更新して堂々のフィニッシュとなった。
「有言実行で優勝、気持ちいいね!ヴィッツはちょっとパワーが足りないけど、下りが多かったおかげでパワー差を埋められたかな。ずっとドリフト状態で攻められたのも楽しかったですね。グラベルラリーを選んで全国走り回ってたので、こんな道での砂利遊びは得意なんです。
実は三日前に小指を折っちゃったんですけど、優しいチーム員に叱咤激励されながら頑張って走りました(笑)今年はTRD Rally Cup by JBLにまた参戦したいと思ってますので、引き続きがんばります」と優勝を決めた山岡。
2位の橋本は「楽しかったです!ベテランの山岡さんには敵わなかったけど、どんどん自分のタイムを更新できたのは気持ちよかったですね。ドライバーとして参加したのは2年前に2回乗った以来なので今回は不安でしたが、小藤さんが横に居てくれたので安心できました。
グラベル林道ラリーは初めてで帰ってこれるかドキドキでしたが、無事に帰ってこれて、そのうえ2位も獲得できて嬉しかったです。」と笑顔で語った。
3位の塩田は「来週も同じクルマでラリーにエントリーしてたので、絶対壊せないってのが頭にずっと残っちゃって…セーブし過ぎちゃったのが一番の敗因ですね。グラベル林道のラリーが初めてってのもありますが、てっぺんは他のグラベルラリーと一線を画す難しさがある気がします。KANPUU R LONG SSの方がタイム良かったのは、路面の荒れが少なかったから踏めたんだと思います。どうしてもクルマのダメージのことを考えちゃって、いま一歩踏みきれませんでした。」と悔しさをにじませた。
2022年シリーズも、世界最大級オーディオメーカーで、家庭用オーディオ、ホームシアター、車載用などの民生機器から、世界中の映画館、スタジアム、レコーディングスタジオなどを対象とした業務用機器をラインナップするJBL(ハーマンインターナショナル株式会社、東京都台東区)からパートナーシップを受け、優勝クルーおよびU-25 AwardのクルーにはJBL製Gaming用ヘッドホン“Quantum 800”が賞品として贈呈された。
次戦は8月20日~21日に秋田で開催される横手ラリー 2022の予定であったが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け中止となった。そのため、次戦は10月1日~2日の第37回シロキヤラリー in 豊根・豊田[INABU]となる。11月にはラリージャパンの開催も控える豊田エリアでのターマックバトルに注目が集まる。
四国のてっぺんラリー2022 in 嶺北 正式結果
TRD Rally Cup by JBL 2022 シリーズポイントランキング
※イベントレポートという性質上、文中では敬称を略して表現しております。